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水と生命生命とは何か? 3
第一節 『西洋での生命観の歴史』
日本は、明治維新後、日本は西洋のものを積極的に受け入れてきた。敗戦後日本は、日本の文化を捨てざるをえない教育を受け、第一章で述べたような問題を抱えている。現代の生命観を捉えるためには、西洋の生命観を把握しなければ述べることができない。古代ギリシアから現代までの流れを把握し考察していく。
1) 初期~中期ギリシア哲学(紀元前7世紀~4世紀)
① イオニアのミレスト学派について
ギリシアが何故「知的な生活」をしていたのか。ジョージ・サートン(1884年にベルギー生まれ、イギリス経由で合衆国に渡り、科学史の父と呼ばれるようになった研究者)は、
一種の知的雑種強勢を示唆している。初期のイオニア人(古代ギリシア人)の多くがクレタ島という小さい島からの移民者で、移民者は、歴史的にみても官僚的制約をまぬがれ、進取的であり創造的であった。紀元前6・7世紀頃のエーゲ海沿岸は、外来文化の開合地点でイオニア諸都市のうちで、ミレストはとくににぎわっていた。ミレストで始まった哲学は、哲学の祖といわれるソクラテス以前のものである。(3)
ミレストの三大哲学人はタレス、アナクシマンドロス、アナクシメネスであり、アリストテレスはソクラテス以前の哲学者たちを「自然学者」あるいは「自然について語る者」とし、「自然哲学」の初祖と主張した。万物あるいは世界の根源は何かを追求し、タレスは水、アナクシマンドロスは無限(観察不可能で限定できないもの)、アナクシメネス(アナクシメネス理論は原子論の先駆の役割を果たした)は空気にたどり着いた。彼らは、それまで自然現象を擬人化した神の意志という考え方(シュメール・メソポタミア・エジプト文化)から、新しい考えを導入し、観察可能な存在に基づく自然観を打ち出した。
この当時の自然というものは、生きていて繁殖し、自ら動くものであり、現代の私たちが思う自然とは違っている。生命についても、現代は生命を生きているもの生きていないもので説明しようとするが、2500年前は、そんなことはまったく問題にならず、タレス(哲学者・科学者・技術者でもあり、クロイソス王のためにハリュス川の流路を変えたことでも有名)は、
「世界は、生きたものであり神性に充ちたもの」であった。生命の特徴の一つは、運動を生じさせる能力をもつものであり、「磁石は鉄を動かすのだから、磁石には生命あるいは霊魂がある」という言葉を残している。このような考えは、あの生物学者のアリストテレスの中にもある。(4)
イオニア学派のミレスト学派の哲学者タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネスたちは、宇宙を形成し、あらゆる生命の源である万物の根源=アルケーで自然を定義しようとした。宇宙論者とも呼ばれ、上記のように万物の根源に対する見解は違うが、物質の本質を説明しようとした物理主義者であり、西洋の最初の哲学者である。